第579章 大雪
雪国なら『かまくら』なんて見飽きているだろうが、めったに雪の降らない東京の子供には憧れの物だ。
そんな東京に記録的な大雪が降った。
冷たい雨が夜に雪に変わり、朝には30㎝の積雪で雪対策が皆無な東京の交通網は完全に封鎖された。
雪は翌日の明け方まで降り続け、多い所では積雪が1mを超えていた。
大人達は雪掻きに大忙しだが、子供達は雪遊びに夢中になる。
「雪だぁ~!」
僕は朝食もそこそこにすぐに外に飛び出した。
近所の友達と雪合戦に始まり、雪だるまを作ったり、斜面をソリで滑ったり…。
「やったぁ一番!金メダルだ!」
こんな事がきっかけで将来のオリンピックメダリストが生まれるかも知れない。
「みんなでかまくら作ろうぜ!」
東京で作るかまくらは黒いのが定番だ。
少ない雪をかき集めるから土が付いた状態になる。
雪国の様に綺麗な雪だけで作るのは至難の技なのだ。
しかし、これだけ積もれば白いかまくらも夢ではない。
雪掻きしている大人も巻き込んで、かまくら作りに夢中になった。
近所中の雪掻きの雪を一ヶ所に集めて固めて小屋くらいの大きさになった。
「出来たぁ!」
僕たち三人が入れるくらいの立派なかまくらだ。
「かまくらって中で何するんだ?」
「みんなでオヤツ持ち込んでパーティーしようぜ」
僕は大好きな歌舞伎揚げを持ってきた。
end