第577章 北風の便り
北風吹く公園を散歩していた。
「寒っ!今日は早目に帰るか…」
その時、風に乗り一枚の紙が俺の目の前に落ちた。
普通なら気にも止めないのだが、何か気になりその紙を拾い上げた。
「年賀状?」
ハガキの下の方にお年玉くじが付いていた。
宛名は…。
『波多野 祐司様』
これって…。
「俺宛て…!?」
ハガキが飛んで来た方を見たが人影はない。
周りを見回しても近くに人はいなかった。
「誰かの悪戯って事じゃないのか…」
恐る恐る裏返してみると…。
『明けましておめでとうございます
突然ですが、クイズです!
私は誰でしょう?』
「な、なんだ?こりゃ?」
他には送り主の名前も何も書かれていない。
もう一度、辺りを見回したが誰もいない。
俺は怖くなってハガキを破り棄てようとした。
「あ…、この字…」
よく見ると、この特徴的な『お』の字に見覚えがあった。
「いや…そんなはずは…」
他の字も間違いない。
「…文子…なのか?」
風に乗りまた一枚のハガキが舞い降りた。
『もう10年よ
私の事はもういいから、あなたは新しい幸せを見つけて下さい
短い間だったけど、幸せでした
さようなら 文子』
天国からの年賀状、たぶんこれが最初で最後だろう。
end