第575章 別荘
久しぶりに学生時代の友達、鷹山からメールが着た。
『別荘に遊びに行こうぜ』
鷹山の家はかなりの金持ちで富士山の麓に別荘を持っていた。
何度か遊びに行ったこともある別荘だ。
鷹山の車に乗って高速を走る。
「吸うか?」
俺は煙草を鷹山に出した。
「悪い、俺禁煙したんだ」
「え?ヘビースモーカーだったお前がか?」
驚いた。
1日に2箱3箱吸っていた鷹山が二、三年会わない間に禁煙するとは…。
俺は煙草をしまって近況の話をした。
別荘には夕方に着いた。
「すぐに夕食の用意をさせるよ」
鷹山は使用人に準備を指示した。
「相変わらず豪華な別荘だな…」
「全部親父の会社の物だからな、俺には何もないさ」
鷹山はあまり父親の事を良く思っていない。
食事の準備が出来るとテーブルに次々と料理が並んだ。
「この茄子は裏の畑で獲れた物です」
料理人が料理の説明をした。
たしかに茄子を使った料理が多い。
「これは美味いな」
料理を食べながら酒も進み、食事が終わると俺は寝てしまった。
夜中、妙な音で目を覚ました。
「何の音だ?」
音は地下室から聞こえてくる。
俺は恐る恐る地下室を覗いた。
別荘の使用人達が並んで座っている奥には、扇を持った坊主らしい男が念仏の様なものを唱えている。
「…なんだ?これは?」
俺は逃げようと振り返ると…。
「見たな…」
青い顔をした鷹山が俺にナイフを突き付けた。
「うわぁぁぁぁっ!」
俺は飛び起きていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…
…ゆ、夢か?」
冷や汗でびっしょりだ。
その日、メールが着た。
『別荘に遊びに行こうぜ』
去年、肺癌で死んだはずの鷹山から…。
end