第574章 異世界アパート17
雪がうっすらと積もり始めたグランロールスのある日。
彼は嵐の様に現れた。
「どけ!どけ!どけ!どけ!どけーっ!」
城に続くメインストリートを走り抜けていた。
「何あれ?」
「見たことない人ね」
一緒にいたカタリナが首を傾げた。
街の人気者でもあるカタリナが知らないって珍しいわね。
「旅人かな?」
「たぶん流れの冒険者じゃないかしら…」
そう言えば、店にも冒険者って来てたわね。
「流れって、別の街の冒険者って事?」
「街から街へ渡り歩いてる、所謂、風来坊よ
たまにそう言うのが来るのよね」
風来坊って、今の日本じゃ絶対お目に掛かれないわ。
「面白そうだから見に行ってみない?」
「アヤコも物好きね」
私達は彼の向かった店に入った。
「…ここは?」
「冒険者の酒場ね
冒険者の溜まり場よ」
確かに周りには屈強な人達ばかり…。
「おい、あれカタリナじゃないか?」
「あれが、深紅のカタリナ?」
「すっげぇ美人だな」
なんか周りがザワザワし始めた。
「ほう、あんたがこの街最強の冒険者、深紅のカタリナか?
やっと見付けたぜ」
さっきの風来坊が近付いてきた。
でも、カタリナが冒険者って…しかも、最強って…。
「でえぇぇぇぇっ!!」
私の叫び声に店にいた冒険者が後退った。
「なんて大声だ…さすがカタリナの相棒だ」
「あの姉ちゃんもただ者じゃないのか?」
「確かナタリーの店にいる娘だよな…
店では可愛いのに猫被ってるのか?」
周りが更にざわついて、何故か私に視線が向いてるのを感じた。
何か、凄く嫌な予感がする。
end