第573章 白銀の約束
夜中に出発すれば朝から滑れる。
そう考えた俺達は夜中に集まり、健児の車に乗り込み出発した。
交代で高速道路を運転し、朝には高速道路を下りた。
「そこのコンビニで朝飯にしようぜ」
インター下りてすぐにコンビニがあった。
「俺が残るから先に買ってこいよ」
エンジンを切りたくないので、健児と透に先に買い出しさせた。
「悪いな、和也の分も買ってきてやるぜ
何が良い?」
「じゃあ、明太子のおにぎりを二個頼む」
「和也の明太子好きは変わってないな」
二人は笑いながらコンビニに入っていった。
しばらくして二人が戻ってきた。
「いやー寒いわ!
これなら思いっきり滑れるぜ」
透がはしゃいでいる。
「けど、もしかしたら降るかもな」
健児は少し天気の心配をしていた。
「…吹雪かなきゃ良いな」
俺は明太子のおにぎりを食べながら答える。
スキー場に着くと準備をしてリフト乗り場に向かった。
「とりあえず一番上まで行くか?」
俺が提案すると…
「えぇ~!俺、久しぶりだし始めは中段からにしようぜ」
「健児は心配し過ぎだぞ
上まで行っちゃえば嫌でも滑って下りなきゃならないんだから、感もすぐ戻るさ」
「透は楽観的過ぎるんだよ
俺達はもう若くないんだぜ」
どっちの言い分も分かるが…。
「…そうだな
俺も透も久しぶりなんだから、始めは健児の心配性に乗っかるか」
俺達はリフトの二段目で下りて滑り出した。
二回も中段から滑れば俺達の感も戻り、頂上に登った。
「良い眺めだな」
「ああ、三人で来るのは30年ぶりか?」
「だな…」
30年前の約束…。
「還暦《じじい》になったら、三人でここから滑ろうぜ!」
end