第565章 一夜の奇跡
今日はクリスマスイブ、昔程ではないが恋人達にはやっぱり特別な日…。
しかし、俺には…。
「何処の空から
天の川が見えるかしら…
あなたのこころに
空いっぱいの
星の瞬きが
降り注ぎますように★」
貴女の言葉が今も耳に響いている。
貴女を思うと今でも胸が張り裂けそうだ。
出来ることなら、もう一度逢いたい…。
もうすぐ日付が変わる。
俺はグラスにウィスキーを注ぐ。
日付が変わると同時に一気に飲み干した。
「メリークリスマス&ハッピーバースデー…」
そのまま寝てしまったようだ。
目を開けると暖炉の火が見えた。
「ここは?」
ソファに預けていた身体を起こして部屋を見渡した。
山の中のロッジを思わせる丸太の壁に暖かな暖炉、テーブルにはウィスキーグラス、そして窓の外は雪化粧。
まるで絵本の中のサンタクロースの家みたいだ。
「目が醒めた?」
聞き覚えのある声に振り向いた。
「!…ど…どうして…」
そこには居るはずのない貴女が…。
「貴方の願いにサンタさんが応えてくれたのよ
今夜だけ一緒に居られるの…
あの頃の様に…」
夢でも幻でも構わない。
俺は涙を止められなかった。
彼女を抱きしめ、愛し合った。
「二度と離さない…」
彼女と抱き合ったまま眠ってしまった。
ピピピピピ…。
アラームで目を覚ました。
いつもと同じ朝だ。
いつもと違うのは、窓の外に雪が降り始めた。
彼女からのクリスマスプレゼントなのだろうか?
俺は空を見上げ、声にならない叫び声をあげた。
end