第559章 ババシャツとライバルは人生に必要なのか?
今月になって急に寒くなってきた。
「これってババシャツっぽくない?」
「ババシャツ?今や死語やろ
すっかりヒート系シャツに置き換わってるやん…
男も女もババシャツ着とるわ」
彼はそう言って笑った。
「そう思うと、ネーミングとデザインって大事よね」
「それより、早よ準備せな遅れるで…」
今日は大事な試合がある。
子供の頃からの幼なじみ《ライバル》との試合だ。
それは先日、突然呼び出されて『果たし状』を渡された。
「…何これ?」
「あら?読めなかったかしら?」
「読めるわよ!
何で果たし状なの!?」
昔から訳分からないところがあったけど…。
「遂に私は貴女を倒す秘技を編み出したのよ
今までの借り、全て返してあげますわ」
「あんたねぇ…」
何言っても聞きそうもないわね。
指定された弓道場に行くと…。
「これって椿?」
「これは山茶花ですわ
椿は種類にもよるけど一般的には12月~4月頃、山茶花はちょっと早くて10月辺りから咲き始めるのよ
山茶花は同じ椿科だからよく似てるけど、椿より少し花が小さいですわね」
「いやいや、花の説明はいいからっ!
何で花が的の前に置いてあるのよ」
「ほほほっ…
これが今回の的ですから!」
勝負は、先に花を散らさずに落としたら勝ちというものだった。
花を散らさないという事は、5㎜程度の茎を射ぬくしかない。
「矢で茎を射ぬくなんて…」
試合が始まると彼女は目を瞑り弓を引いた。
「これが秘技心眼打ちよ!」
そのまま放たれた矢は…。
「…どこに打ってんのよ?」
明後日の方へ飛んで行った。
結局、勝負は私の勝ちで、彼女は「覚えていなさい!」と捨て台詞を吐いて去って行った。
end