第558章 鍋と怪人は熱いうちに…
11月に入り、夜はめっきり冷えてきた。
「今夜は鍋にするか…」
仕事終わりの帰り道、スーパーに寄って夕飯の食材を買い出す。
「まずは何味にするかだな…」
市販の鍋の素の種類はどんどん増えてる。
定番から洋風な物まで様々だ。
いつもは自分で作るんだが…。
「たまには変わったインスタントでも使ってみるか…」
手に取ったのは『トムヤムクン』風の鍋の素。
「後は白菜とネギと…」
野菜と肉を買って帰った。
テーブルにカセットボンベのコンロを置いて土鍋にトムヤムクンのスープを注ぐ。
野菜を煮ながらテレビを点ける。
特に何を見るって訳じゃないが、たまたまやっていたのは映画『オペラ座の怪人』だ。
オペラ座に住み着いている怪人が歌姫に恋した話らしいが、見た事はない。
「そろそろかな?」
野菜がだいぶ煮えたから肉を投入。
トムヤムクンなら海老の方が良かったかも知れない。映画は途中からだが、怪人が歌姫を劇場の地下に拉致監禁したのか?
「…この歌姫の女優、何かで見たことあるなぁ…」
白菜と肉を一緒に食べる。
「うん、鍋の底に沈んでる奴は味が凍みて美味い!」
最近のインスタントは本当に美味いよな。
〆はトムヤムクンに合わせてタイビーフンにした。
残った具材とビーフンを入れて一煮立ち…。
「この仮面、カッコいいなぁ」
映画もそろそろクライマックスか?
顔の半分が隠れる仮面、怪人は生まれつき顔が醜いので仮面で隠している。
その仮面を外した素顔に歌姫がキスをする。
「この俳優と女優、上手い…」
トムヤムクンのフォーが出来上がった。
「やっぱりこの組み合わせは美味いなぁ」
今夜は鍋も映画も堪能出来た。
end