第557章 ネルシャツインは身だしなみ?
バイトの昼休み…。
「王手飛車取り!」
良太と将棋で勝負している。
「うっ…待った!」
「飛車角落ちのハンデをやったんだ、待ったは無しって言ったよな」
この程度のハンデじゃ負けないけどな。
「そんな冷たい事、言うなよ
俺は一応先輩だぞ」
「勝負にバイトの先輩後輩は関係ない!」
このバイトは良太から紹介された。
良太は3年前からバイトしてるので、正真正銘の先輩だ。
「ちっ、分かったよ…今日は俺の負けだ」
「じゃあ、今日の掃除当番頼むぜ」
店が終わると店内掃除は当番制だ。
俺は今日が当番なのだが、どうしても外せない用事がある。
「そんなに早く上がってどうすんだ?」
「決まってんだろ?デートだよ」
俺は親指を立ててみせた。
「今時、ネルシャツをズボンにインしてる奴がデート?場所は将棋会館か?」
「…棋士は身だしなみも大事なんだよ」
良太には見透かされていた。
「今日は師匠の大事な試合があるんだ」
現役最後の対局、見逃すわけにはいかないのだ。
「そうか、お前も早くプロになって活躍しろよ
そうすりゃ俺がお前に勝った事を自慢出来るからな」
「いつの話だ?
まあ、今年中にはプロになってみせるさ」
そう見栄を切ったが、プロになったのは三年後だった。
end