第553章 豆電球で焼き芋が焼けるか!?
「石や~き芋~♪」
スピーカーから聞き慣れたメロディが流れる。
まさか焼き芋を売り歩く事になるとは…。
それは昨日の事だ。
「このタイプの電球はもう在庫はないですね」
電気屋の店員にあっさりと断られた。
それゃあそうだ、今時『豆電球』なんて言っても若い奴らは知りもしないだろう。
しかし、この懐中電灯はじいちゃんの形見だから捨てる訳にはいかないんだ。
秋葉原辺りの怪しい電気屋にでも行けばあるかも知れないが、こんな骨董品みたいな物…。
「あっ!あそこなら…」
俺がガキの頃からやっているのか?やってないか?分からない骨董屋ならぬガラクタ屋がある事を思い出した。
早速行ってみるが…。
『骨董 轟《とどろき》』
古い木造の店先にまで商品《がらくた》が並んでいるが、さすがに入るのに躊躇する。
「昔と変わらない…やってるのか?」
恐る恐る店内に入った。
「こんちは~」
「なんじゃ!押し売りなら叩っ斬るぞ!」
奥から日本刀を持ったじいさんが鬼の形相で出て来た。
「うわぁ!押し売りじゃないです!
この豆電球がないかと思って!」
腰が抜けそうなくらい驚いた。
「豆電球?って事は客か?」
「はい!はい!客です!」
じいさんは日本刀を鞘に収め…。
「おお!何年ぶりの客じゃ?
悪かったな、驚かせて…」
ものすごい笑顔になった。
「あの~、これないですか?」
切れた豆電球を見せると…。
「懐かしいな、いまだにこんな物使うのか?」
「じいちゃんの形見なもんで…」
そういうとじいさんは「ちょっと待ってろ」とすぐに探し始めてくれた。
しばらくして…。
「どこかにあるはずだから、明日また来てくれ」
すぐには見つからなかった。
そして、今日再び訪れると店先に真新しい焼き芋の軽トラが置いてあった。
「おお!来たか!
豆電球を探してる間にちょっと頼まれてくれ」
そう言われ車の鍵を渡された。
「ルートはナビに入れてあるし、ドラレコも付いてる最新の車だから安心しろ」
じいさんの本業はこっちだそうで、骨董屋は趣味だそうだ。
帰ってきたら豆電球も見つかったし、焼き芋も貰えた。
end