• テキストサイズ

千分の一話噺

第551章 危険な誘惑


「私は魔女サマンサ、あなた生け贄にならない?」

「はあっ?」
いきなり、変な格好をした女性に呼び止められた。
銀色の髪、赤い瞳、黒服、真っ赤な裏地の黒マント…。

「あぁコスプレーヤーの方ね
よく出来た衣装ですね
コスプレ会場はC館ですよ」
今日はコミケとかいうイベントの初日。
ハロウィンが近い事もあり、夜にはコスプレパーティーが開かれるそうだ。
彼女みたいな魔女やらゾンビやらのコスプレ姿が多い。
私も一応(まるっきり興味はないのだが)スタッフなので、彼女をコスプレ会場に案内してあげた。

「ねぇ、生け贄を捧げるなら魔法でなんでも願いを叶えてあげるわよ」
「へぇ~なんでもですか?
でも、生け贄なんてないのでいいですよ」
(さすが、なりきってるわね
もしかして有名なコスプレーヤーかしら?)
でも有名人なら会場に迷う訳ないか。

「あなた欲がないのね?」
「欲を言えばキリがないでしょ
あなた一人じゃ全部叶えきれないわよ」
(なりきってるからって何なのこの人!?
コスプレーヤーって、みんなこんな感じ?)

「私の魔法に叶えきれない願いなんてないわよ」
「はいはい、もうすぐ会場ですよ」
(めんどくさい人に引っ掛かっちゃったなぁ)

「私の力を信用してないの?
試しにあのドラキュラみたいな人を消してあげましょうか?」
「あなたねぇ、いい加減しなさいよ!
コスプレーヤーだか何だか知らないけど…」
私は我慢の限界を超え、延々と説教をしてしまった。
(我ながら大人げない…)

「私に説教とは良い度胸しているわね
こうなりたいの?」
女性がパチンと指を鳴らすとカボチャの置物が破裂した。
「まあ、その魂に免じて今日は帰りましょう」
そう言うと、女性の周りが暗く黒くなりだした。
(何?ガス?テロ!?)
私は後退りした。

女性はその黒いガスの中で蝙蝠に姿を変え飛んで行った。
「その魂、気に入ったわ
大事にしなさい、また会いに来てあげる」
二度と会いたくないわね。


end
/ 1580ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp