第548章 ポジティブ
「絶対、宝くじを当てて宇宙旅行に行く!」
彼女は拳を固めて振り上げた。
「何?そんなに気張ってんだよ?
宝くじなんて早々当たる訳ないだろ?」
彼は少し呆れ気味だった。
「あんたは何でそう夢のない事を言うのよ!?
当たりがあるんだから後は運の問題でしょ!
今度の五億は私のものよ!」
彼女は常にポジティブだ。
「しかし、何で宇宙旅行なんだ?」
彼は首を傾げる。
「ただ何となく宇宙から地球を見たいと思っただけよ」
彼女はあっけらかんと答える。
「…そんな理由かよ
だったらもっと使い道があるだろ?
家買うとか?家買うとか?家買うとか?…」
彼は欲望がだだ漏れだ。
「そんなに家が欲しいなら実家に帰ったら?
あんた長男だから跡継げるんでしょ?」
彼女は少し呆れ気味だ。
「実家がケーキ屋なの知ってるだろ?
俺はエンジニアを辞める気はないんだ」
彼は結構頑固であった。
「そうなんだ?
私、あんたん家のケーキ好きなんだけどねぇ
あんたが実家に戻ればケーキ食べ放題だと思ったのに…」
「そんな上手くいく訳ないだろ!
俺を何だと思ってるんだ?」
「ケーキ屋の息子!」
「って、そのまんまかよ!」
「あんたも宝くじ買ったら?
そうすれば家も買えるよ」
「何で当たる事が前提なんだ!?」
「当たりがあるんだから、当たる可能性は0じゃない!」
「ふぅ…確かに0じゃないな
よし!宝くじ当てて家と宇宙旅行だ!」
この二人が宝くじを当てるのはいつになる事やら…。
end