第55章 バンド魂
「新年一発目!ぶっ飛んで行こうぜっ!」
イントロが始まると、ヴォーカルの凱が気合いを入れた。
俺達『ジョーカーズ』は、去年メジャーデビューを果たした。
しかもデビュー曲はいきなりトップ10に入る快挙、一躍人気バンドの仲間入りとなった。
そんな俺達だが、デビュー前は路上ライブをメインにしてきた。
「俺達のスタートは常に路上からだ!」
年末、リーダーの鉄也が新年も路上ライブから始めようと言い出した。
「マジかよ!俺達もうメジャーだぜ、ヤバくね?」
凱が心配顔で驚いた。
「俺もちょっとヤバいと思う…ヒロはどうよ?」
ベーシストの剣斗も反対で、俺に意見を求めた。
「俺か?…鉄也の気持ちは分かるが…」
メンバー間に不穏な空気が流れた。
「ゲリラでやるか?」
俺が提案した。
「だったら覆面もしようぜ」
凱が乗ってきた。
「覆面…ってどうすんだよ」
俺の疑問に鉄也が答えた。
「正月だし紋付袴に派手なメイクでやろうぜ」
俺は剣斗と顔を見合わせた。
「しょうがねぇな…
覆面ゲリラライブなら二、三曲やってバックレちまえばいいか」
剣斗もやる気になったようだ。
「決まりだな
正月一発目は俺達のホームで覆面ゲリラ路上ライブだ!」
鉄也が息巻いた。
年末カウントダウンが終わると鉄也が叫んだ。
「ハッピーニューイヤー!
1…2…1・2・3・4!」
end