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千分の一話噺

第539章 福引き


うちの近所の商店街が今日からお盆休みの期間限定で歩行者天国となる。
「毎年、屋台が出たり、福引きもやってたりで結構賑わうのよ」
いつもなら、音楽を流し、パフォーマーがいたり、ゆるキャラがいたり、ちょっとした夏祭りなのだが、今年は歩行者天国ではあるが…。

「福引きはあるけど、屋台もないし人出は少ないわね」
「このご時世だ、仕方ないだろ?
歩行者天国にするだけでも思い切ったと思うぜ」
彼と楽しみにしていた歩行者天国も新型コロナに奪われた。
去年から楽しみなイベントは尽く自粛やら縮小やらで全く楽しめていない。

「せめて福引きだけでも良いのを当てないと…」
この日の為に、出来るだけ商店街で買い物をして福引き券を貯めた。
例年なら一等は温泉旅行なのだが、今年は大型テレビに変わっている。
勝負服に、朝のテレビでやってる占いのラッキーカラーも身に付けて、御守りも持って福引きに挑んだ。

ガラガラ…。

「へぇ~面白い!正に瓢箪から駒だな!」
彼が驚いたのは福引きの方法だ。
ここの福引きは、彼が言った通り大きな瓢箪から駒が出る仕組みだ。
「そんなのどうでもいいのよ!」
私は福引きに集中した。
ティッシュ…、ティッシュ…、ティッシュ…、ティッシュ…、ティッシュ…。
「何でティッシュばっかり…」
五連続でティッシュとなり、係員も苦笑いしている。
「力入りすぎじゃねぇ?
一回、俺にもやらせろよ」

ガラガラ…。

出てきた駒は銀色だった。
「出ました!二等です!おめでとうございます!
最新のドラム式洗濯機です!」
「あはは…、当たっちまったな…」
彼は照れ笑いしている。
その後、私はティッシュを更に増やしただけだった。


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