第54章 茶会でLUCKY
「茶会ねぇ…」
新年早々、とんでもない行事に誘われたもんだ。
その辺のカフェでお茶して駄弁るなら良いが、本格的な茶室で茶事をする事になるとは…。
それは年の瀬の挨拶周りでの事。俺はある得意先の部長に新年の茶会に呼ばれた。
「正月にうちで新年の茶会を開くんだが、来てくれないか?」
「お誘いありがとうございます
是非伺わせて頂きます」
俺はよく確かめもせず安請け合いをした。しかし、後から担当者に言われた言葉に愕然となった。
「部長の初釜の誘い、受けちゃったね、大丈夫?」
「えっ?初釜って?
ただのお茶会ですよね?」
「やっぱり、知らなかったんだ
うちの部長の奥さん、茶道の先生なんだよ
毎年正月、自宅の茶室で茶会を開くんだ」
「えぇーっ!茶道ですか!?」
今更、断る事も出来ず、気が重いまま新年を迎えた。
休み中にネットで最低限の作法を覚えてから、部長宅へ出向いた。
「新年明けましておめでとうございます
本日はお招き頂き、ありがとうございます」
「よく来てくれた
堅苦しい挨拶はいいから、上がりなさい」
部長は上機嫌で俺を招き入れた。
「君が来てくれて助かったよ
私一人じゃうちの奴に何言われるか…」
部長は奥さんに頭が上がらないようだ。
茶室に入ると和服の女性が二人。
茶を立てるのは、もちろん奥さんだろう。
もう一人の若い女性は御弟子さんだろうか?めちゃくちゃ綺麗な人だ。
「父がお世話になっております」
こんな出会いがあるなら、茶会も悪くないか…。
end