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千分の一話噺

第533章 宇宙への思い…


うちでは七夕には毎年笹飾りを飾る習慣がある。
亡き父が天文学の学者だったという事もあり、私が小さい頃からの習慣だ。

もちろん天文学からすれば、七夕などただのおとぎ話にしか過ぎない。
しかし父は、おとぎ話から星や天文学に興味を持ってくれるならそれはそれで良いと言っていた。

まあ、私は趣味で天体観測をする程度で、父の後を継ぐ事はなかったが…。


今年も七夕を迎えた。


娘が願いを書いた短冊を笹に吊るす。
『トマトが食べられるように…』
サラダのトマトをいつも残し母親に怒られているからだ。

「パパは嫌いなものないの?」
「う~ん…猿かな?」
「お猿さん?何で?」
「猿の星座がないからさ…」

本当は嫌いではなく好きなのだ。
小さい頃、父に…。
「お前は何の動物が好きだ?」
と、質問され『猿』と答えた。
「そうか、猿か…
動物の星座はたくさんあるんだが、残念ながら猿の星座はないんだ」
私が残念そうに落ち込んでいると一枚の天体写真を見せてくれた。
「猿座はないけどモンキー星雲ならあるんだよ
宇宙って面白いだろ?」
その写真には真っ暗な宇宙に赤く見える猿の顔した星雲があった。
私が天体観測を始めたきっかけになった写真だ。


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