第530章 トロピカルなクーポンはいかが?
『クーポン券の期限が間近です
今すぐトロピカルランドへGO!』
突然、こんなメールが届いた。
「…何だ?新手の詐欺か?」
訳の分からないメールは即削除。
『クーポン券の期限が間近ですよ』
また、同じアドレスからメールが…。
「…?、こんなにすぐに次が来るか?」
とにかく、怪しいメールは削除。
『だから、クーポン券の期限が間近だって!』
削除と同時にメールが…。
「何なんだ?このメールは?
…クーポンなんて知らねぇよ!」
削除しようと思ったが、無視する事にした。
『ねぇねぇ、クーポン券使えなくなっちゃうよ!』
メールではない。
「だ、誰だ!?」
振り向くと見知らぬ少女が立っていた。
「私?私は地縛霊よ」
「…地縛霊?地縛霊って幽霊の事だよな?
真っ昼間から幽霊なんて出る訳ないだろ!」
そう言うと少女は自分の足元を指差した。
「!!…足が…」
少女の足元が見えない。
「ね?地縛霊だって分かった?」
少女はニコッと笑った。
「はい、これクーポン券!
すぐに使ってね」
差し出されたクーポン券を受け取った。
「こ、これは何のクーポンなんだ?」
明らかに手書きのクーポン券だ。
「私とトロピカルランドでデート出来る券よ」
「…デート?…幽霊《きみ》と?」
(…待てよ、トロピカルランドって確か十年くらい前に潰れたはずだが…)
この少女は十三年前、楽しみにしていたトロピカルランドへ行く途中で事故に合い亡くなる。
トロピカルランドへの未練が強く、魂を地縛霊としてここに留めていた。
「…言い難いんだがなぁ…」
end