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千分の一話噺

第529章 かき氷の誘惑


み~ん!み~ん!み~ん!

「…やっかましいなぁ」
朝も早よから蝉時雨、休みの日くらい寝かせてくれ。

み~ん!み~ん!み~ん!

「起きりゃいんだろ、起きりゃあ…」
暑さと蝉の声で起こされるのは夏の約束みたいなもんだからな。
「ふぇ~…だれるなぁ…何か飲み物…」
冷蔵庫の中は空っぽだった。

み~ん!み~ん!み~ん!

この夏の陽射しにも蝉は元気だ。
駅前のスーパーに向かっていたら…。
「…銀行強盗らしぞ」
「立て籠ってるって…」
行き交う人がそんな話をしていた。
(…銀行強盗…立て籠り?)
こんな日に大事件が起きるとは…。

み~ん!み~ん!み~ん!

駅前の歩道は封鎖され、沢山のマスコミや野次馬が集っていた。
「何だよ、スーパーに入れないじゃないか?」
スーパーは事件の銀行の隣、近寄る事すら出来なかった。
(サ店で時間潰すか…)
マスコミは仕事だから分かるが、この炎天下で野次馬してる奴の気がしれない。

み~ん!み~ん!み~ん!

「アイス…、いや、かき氷下さい」
こう暑いと、かき氷の誘惑には勝てない。
(まあ、強盗に入って逃げられずに籠城するような間抜けならすぐに片付くか…)
「お待たせ致しました」
かき氷が運ばれて来ると同時にスマホが鳴った。
『主任!今、駅前で銀行強盗が籠城していて…』
「…知ってるよ」
部下からの応援要請だった。
「…俺は今日、非番なんだ
それに今はかき氷の尋問中で忙しいんだ
そんな間抜け、お前らだけでさっさと片付けろ」
『そんな!主任…』
部下は何か言いた気だったが、電話を切ってかき氷をパクついた。

み~ん!み~ん!み~ん!

頭がキーンとする。


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