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千分の一話噺

第527章 避暑地の海開き


梅雨も開け夏本番!
青い空にギッラギラの太陽!

…とくれば当然海開き!

浜辺には海の家が建ち並び、簡単なセレモニーが行われ、待ちわびた海水浴客が一斉に海へなだれ込む…。



数年前ならこんな光景があちこちの海水浴場で見られたが、パンデミックの最中、どこの海水浴場も基本的には閉鎖や遊泳禁止で人影は少ない。


真っ青な空、遠くに真っ白な入道雲、真上からは焼ける様な日射し、気温は38度を超えている。
「…こんな日は海で泳ぎたいわね」
「今はどこも遊泳禁止だし、海の家も出ないからな…」
あまりの暑さに俺達は近くの喫茶店に飛び込んだ。
有名避暑地の、周りには有名ブランド店が建ち並ぶ一角にも関わらずお洒落なカフェとは呼べない昔ながらの喫茶店。

それでも冷房が効いているだけ助かる。
「せっかくここまで来たのに閉まってる店が多いな」
「感染が収まらないとどこもダメね」
そんな会話をしていたら…。
「お客さん、この近くに穴場がありますよ」
マスターが手書きの地図を差し出した。

『山で海開き』

地図にはこんな文句が書かれていた。
「…何?…山で海って?」
マスターはニヤリと笑うだけだった。
「へぇ~面白そうね」
俺達は翌日、地図に書かれている場所に向かった。




『雲海で有名な白墨山で遭難事故が…男女二人の遺体が…』


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