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千分の一話噺

第524章 そして誰も…


『…が演説中に心臓発作で亡くなりました』

どの局もこのニュースで持ちきりだ。
今月に入ってから演説や講義中に死亡したのは五件目…。

警察は事件の可能性があるとして捜査を始めたが、会場は北海道から九州までとさまざまで、被害者に関連性はなく、死亡した時は周りに誰も近寄らなかった事から病死として扱われた。
しかし、亡くなったのが黒い噂が絶えない議員や悪徳医師、パワハラ教授など評判の良くない人達ばかりで、テレビのワイドショーやネットでは大盛り上がりの話題となっている。

「絶対、殺されたに決まってる」
「恨んでる奴はいっぱいいるからね」
「俺が殺してやりたかった」
「誰だか知らないがよくやってくれた」
特にネットでは賛辞のコメントが多く上がった。

「あの水差しは怪しいですな」
「あのマイクにも揮発性の毒を仕込めるしね」
「一定の時間後に溶ける錠剤と言うことも…」
テレビでは会場の至るところを検証し、専門家と称する怪しい解説者が話を大きく盛る。

これを機に演説などが行われなくなったが、事件はこれだけでは終わらなかった。

テレビの生放送中にキャスターやコメンテーターなどが次々と倒れた。
国営放送局から地方放送局まで、ほぼ全国的に発生していた。
テレビ局はパニックに陥り、全ての放送が中断された。
ネット配信も安心ではなかった。
ある者は自宅で、またある者は店内で配信中に倒れる。

もう誰もこれが単なる偶然の病死だとは思わなかった。
全ての人が目に見えない殺人者に怯えた。

唯一の共通点に気付いた者はいなかった。
そこには必ず生け花が活けてあった事を…。


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