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千分の一話噺

第521章 掘り出し物


日曜日、朝の散歩でいつも立ち寄る公園に行ったらバザーが開かれていた。

「へぇ~この公園でバザーなんて初めてだな」

何かのチャリティーで、近くの商店街から出店されていたり、主旨に協賛している企業やブランドからの出店だったりとかなり大掛かりなバザーだ。
食べ物の屋台も出ていて、さながら祭りの様な賑わいに来場者も多い。

一般者が出店している一角があった。
鑑定を仕事としている者としては、掘り出し物はこういう所の方があるものだ。

アンティークっぽい雑貨を並べてある所で立ち止まってみた。
古いと言えば古いのだが、アンティークと言うよりガラクタに近い。
ちゃぶ台や番傘はともかく、すすけた招き猫や色褪せたボーリングのピンやら…。
どこかの潰れた店から拾ってきた様な物が並んでいる。

店主だと思うのだが、ヘッドフォンをしてガムを噛みながら近付いてくる怪しげなオッサン。
「この招き猫なんてどうよ?
ある老舗に置いてあった百年くらい前の代物だぜ」
(明らかに嘘だろ)
これ以上いても無駄かと思い帰ろうとした時、ある絵に目が止まった。
「これは…」
パッと見は何の変哲もない風景画だが、どこかで見た覚えがあった。
(まさか…こんな所に…?)

「おっちゃん、これいくら?」
「それは5000円だな」
「…2000円なら買う」
「3000円でどうだ?」
「2000円!」
「くそ~持ってけ泥棒!」

オッサンに2000円を渡して、その絵を買い取った。

家に戻ってよく調べると…。
「…間違いない…本物だ」
何十年も前に盗まれて行方が分からなかった、とある有名な画家の絵だ。
私が長年追い求めていた幻の一枚がガラクタ同然に売っているとは思わなかった。

あのオッサンに見る目がなくて逆に良かった。
5000円どころか5000万でも売れる絵なのに…。


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