第518章 異世界アパート12
「あら?ホトトギス?」
この異世界でホトトギスの鳴き声がするはずはない。
似たような鳴き声の鳥がいるのだろうか?
「あれはフィーア鳥よ
春の訪れを知らせてくれる鳥ね」
カタリナさんが教えてくれた。
今日はナタリーとカタリナと一緒に山に食材を探しに来ている。
「カタリナは料理が上手いだけじゃなくて物知りなのよ!」
ナタリーが自分の事の様に自慢する。
「お姉ちゃんだって、お茶いれるの上手いし、動物や植物育てるの得意でしょ」
カタリナがお返しにナタリーを褒めた。
(やっぱり双子とは言え得意分野は違うんだなぁ)
「仲良いわね、羨ましい…」
「アヤコには姉妹はいないの?」
「弟はいるけど、これが生意気な奴でさぁ…
きゃあっ!」
お喋りに夢中で足元が滑る事を忘れてた。
「大丈夫?まだ滑るって言ったじゃない」
こっちはやっと長い冬は開けたが、まだ足元には雪が積もっている。
この時期の山は、モンスターがまだ冬眠から目覚めていないので山菜狩りにもってこいなのだと言う。
(本当はちょっと怖いんだけど…)
日本では雪解けのふきのとうが山菜の王道だけど、こっちにはどんな山菜があるんだろう?
「さあ、たくさん採って帰りましょ!」
カタリナが食べられるものを選んで、私とナタリーが採っていく。
日本の山菜と違い赤や黄色と色鮮やかだ。
若芽や木の実やキノコ類と採れるものはたくさんあった。
「ねぇ、雨になりそうだから、そろそろ帰るわよ」
しばらくするとナタリーが声を上げる。
「こんなに晴れてるのに?」
「山の天気は変わりやすいのよ」
(どの世界でも山の天気は似てるのね)
天気予報のないこっちの世界では、今までの経験から予測するしかない。
こっちに慣れたとは言え、まだそこまでの経験がない私には当分分かりそうもないわ。
end