第513章 誰が為に知識はある?
子供の頃、何かを覚えると誰かに教えたり、自慢したりする事はよくある。
「姉ちゃん、姉ちゃん
甲子園球場の外野の狭くなってる所って知ってる?」
覚えたばかりの知識を自慢しようとした。
「ラッキーゾーンでしょ」
姉にあっさり答えられてしまった。
当時の甲子園球場には外野をフェンスで仕切り、ホームランが出やすい様に狭くしていた。
「ちぇ~っ、知ってるんだ…」
ガックリと肩を落とす。
姉は、ちまきを食べながら庭を指差し…。
「じゃあ、あのお花の名前知ってる?」
とお返しされた。
「分かんない」
としか答えられなかった。
「あれは虞美人草っていうのよ」
「ぐびじんそう?」
聞き慣れない名前だった。
「そう、昔、中国の虞って言う美人が自殺したときに流れた血が花になったって言う伝説があるから『虞美人草』って呼ばれてるのよ」
「さすが姉ちゃん、何でも知ってるんだね」
俺はただただ感心するだけだった。
それ以来、ちまきを食べると虞美人草の名前を思い出す。
大人になって知ったのだが、雛芥子の別名が虞美人草だと言う事を…。
end