第512章 悪夢は大鎌を持って…
「今日もあそこで飲もうぜ」
若者数人がコンビニで缶ビールなどを買い込み道端のちょっとしたスペースに座り込んで飲み始めた。
始めは大人しく飲んでいたが酒が進むにつれ、次第に声も大きくなり歌い出す者も出てくる。
空き缶やゴミも散らかし放題だ。
午前二時を回った頃、酒も飲み尽くした。
「…そろそろ帰るか?」
そこに一人の老人が近づいてきた。
「お主達も花見か?」
「はあ?何言ってんだ?このジジイ?」
「そこに躑躅が咲いておろう」
老人が若者達の後ろを指差した。
そこには白い躑躅の花が咲いていた。
「こんな花で花見なんかするかよ?」
「ジジイも飲みてぇなら酒買ってこいや」
若者達はそう言って笑い飛ばした。
しかし、老人は不敵な笑みを浮かべる。
「お主達は、躑躅が何故紅いか知っておるか?」
「知るかよ!邪魔だ、ジジイ!」
一人の若者が老人の胸ぐらを掴んだ。
刹那、その若者の腕が切り落とされた。
「ギャアァァァッ!!!」
老人の手には大きな鎌が握られていた。
「躑躅の紅い色は血塗られた色なんじゃよ
儂は紅い躑躅が大好きなんじゃ…
お主達の血で白い躑躅を真っ赤に染めてくれよう」
老人の目が不気味に紅く輝いた。
「た、助けてくれ!」
若者達が逃げ出す。
「もっと紅く、紅く、紅く…」
老人は大鎌を軽々と振り回し、逃げ惑う若者達の首を落としていく。
「ヒッヒッヒッ…
お主達の様な生きている価値のない者の血はどす黒くていかんな…」
老人は闇に溶けるように消えた。
朝になると、路上飲みしていた若者達はその場に倒れていたのを通行人が見つけ、救急搬送された。
全員、新型コロナに掛かっていて、数日後に亡くなった。
end