第508章 目に見えない何かがあるのか?
『ウサギさんの逆襲』
夏に放送予定の新ドラマ、主役のウサギさん役に抜擢された。
若い頃はいろいろなオーディションに参加したが鳴かず飛ばずで脇役ばかりだったのに、アラフォーになった今頃主役になんて…。
「主役?アラフォーのお前が?」
ずいぶん失礼なことを言っているのは、私の旦那だ。
「もうちょっと喜んでくれても良いんじゃない?」
「喜びより心配だよ…
今までそんな重要な役柄やった事ないだろ?
レギュラーで出てたドラマでも毎回セリフ一個くらいだったじゃないか」
旦那の言う事は分かる。
この話しがきた時、私も何で?って思った。
「しかし、…ウサギさん?…逆襲?
一体どんなドラマなんだ?」
旦那は首を傾げた。
「これからだからよく分からないよ」
「台本貰ったんだろ?読んでないのかよ?
役作りも考えないとダメだろ?」
「それがね、まだ初回分しか出来てないんだって…
その初回も、ウサギさんの過去の事や親の話しなどが多くて私の出番は少なめ…
監督からは、「君はそのままで良いから」って言われてるし、何か調子狂う現場になりそうよ…」
本当に私、主役なのかしら…。
「ドッキリとかじゃないのか?」
旦那が見透かした様に言う。
「それはないわよ
ほら、ネットで発表してるんだから…」
スマホの画面を見せた。
「まあ、どっちにしても仕事なんだからしっかりやりなよ
すぐに撮影も始まるんだろ?」
「来週からだって…
夏ドラマだから、いきなり海のシーンらしいわ」
でも、来週って花冷えするとか予報で言ってたのよね。
「海?まさか水着とかじゃないだろうな?
今のお前じゃ、人前に出れないぞ」
女優を相手に本当に失礼な旦那だ。
「あんたのビールっ腹には負けるわよ!」
例えドッキリでも主役には変わらない…、私には一花咲かせる最後のチャンスだ。
女優魂を全て出し切って演じてやるわ!
end