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千分の一話噺

第51章 青い手袋


「うわぁ寒い寒い!」
吐く息が白くなった、そんなある朝。
いつもの様に顔を洗う。
手が霜焼けになりそうなくらい水が冷たい。
「真冬みたいだ…
まだ11月になったばかりなのに…」


大昔なら、「やっと冬らしくなってきた」と言っていただろう。
しかし2515年現在、地球は短期間の気候変動を繰り返し氷河期に入ろうとしていた。


「昨日のニュース見たか?ハワイは雨だってさ
やっぱりハワイは暖かいんだな」
登校中に親友Yと交わした会話だ。
「なんだよ、おニューの手袋じゃん!
誰に貰ったんだ?」
Yは冷やかすように俺の手を掴み上げた。
「自分で買ったんだよ!」
俺の手には青い手袋、実は先日の誕生日に彼女から貰った手袋だった。

「おはよう♪」
そこに彼女が現れた。
「お、おはよう…」
俺は手を隠すように挨拶をした。
「あっ、手袋使ってくれたんだ
嬉しい♪」
「お、おぅ…」
俺は照れ笑いしながら、Yを見た。
Yはやっぱりといった顔でニヤついていた。
「なんだよ、文句あんのか?」
「へぇ~お前がねぇ」
Yはまだニヤニヤとしている。
「今日は寒いから霜焼けになったら大変だろ!」
俺はしょうもない言い訳を叫んだ。
Yと彼女は顔を見合わせて吹き出していた。

三人は白い息を吐きながら足早に学校へ向かうのだった。



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