第505章 始まりはいつも突然に…
今日、辞令が降りた。
『土居中支社勤務を命ずる』
「えっ?…俺が!?
冗談ですよね?
あっ、エイプリルフールでしょ!?」
しかし、上司は首を横に振った。
「辞令にジョークがあるわけないだろ?
来週から向こうだからね」
いきなりの異動命令に俺は呆然としていた。
別名『島流し』と云われる土居中支社への転勤…。
某県の超ローカル線終点駅から更に超ローカルバスに揺られて着く土居中村にある支社。
何でこんな場所に支社があるのか?社長以外誰も知らない我が社の七不思議の一つ。(後六つは…?)
仕事で大きなミスをした社員は必ずそこに飛ばされる。
しかし、俺は何もしていない。
「ミスもしてないのにどうして!?
それに内示だってなかったじゃないですか!」
俺は上司に食い下がった。
「悪いねぇ
向こうで一人退職してな、急遽補充をしないといけなくなったんだ…
君なら十分やっていけるだろう」
上司は自分の事じゃないから能天気に言ってくれる。
「そんなぁ~子供が入学したばかりなんですよ!
単身赴任って事になるじゃないですか!」
「向こうは社員寮があるから大丈夫だよ」
(そういう問題じゃないんだよ!)
もう何を言っても無駄な様だ。
そもそも上司も更に上から云われたに過ぎないんだから…。
(辞めて…って訳にはいかないよな…)
諦めてデスクの整理を始めた。
「土居中支社だってな、お気の毒に…」
同僚が深刻な顔で…。
「…一人退職したって言うけど、本当は自殺したらしいぜ」
「ば、バカな事言うなよ」
「あははっ、冗談だよ
深刻な顔してるから、からかっただけだ」
「お前なぁ!」
同僚にしてみればエイプリルフールのつもりだったらしい。
が、現地に行くと…。
end