第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
松本さんに背中を押されるようにして、僕は翔くんの誘いを承諾した。
でもさ、やっぱり緊張するよ…
こんなことなら、“おめかし”まではいかなくても、ちゃんとした格好して来れば良かったよ。
だってさ、“恋人”になって初めて翔くんのお家に行くのに、しかも翔くんのお父さんとは初体験…、じゃなくて初対面なのに、流石にヨレヨレのTシャツとくたびれたデニムのハーフパンツとかさ、失礼じゃん?
足元だって、何故か色違いのギョサン履だし…
「ね、ねぇ、僕着替えて来た方が良くない?」
「大丈夫だよ(笑)」
「で、でも翔くんのお父さんに会うのに、こんな格好じゃ…」
「大丈夫だって(笑) そのままで十分可愛いから♡」
「え、ほんと? 僕、可愛い?」
…って、そーゆー問題?
そりゃさ、可愛いって言って貰えるのは嬉しいけど、それは翔くんがそう思うだけで、お父さんはそうは思ってくれないかもしんないじゃん?
だからやっぱりこんな格好じゃダメだよ…
「やっぱり一度着替えに戻ろ?」
僕は翔くんの腕を掴んで、首がグワングワン揺れるくらいに揺さぶった。
そしたらその様子を黙って見ていた松本さんが、突然運転席から降りて、トランクを開けた。
もしかして怒っちゃった…、とか?
不安になって隣の翔くんを横目でチラッと見るけど、翔くんも何が起きてるのか分かってないようで、しきりに首を傾げている。
すると…
「これでも着とけ」
ってトランクを閉め、運転席に戻った松本さんから、紙袋が僕に向かって投げられた。
見事紙袋をナイスキャッチした僕は、一瞬翔くんとお顔を見合わせてから、紙袋をそーっと開けた。
そして、中身を見た瞬間、僕は自分でもビックリするくらい、凍り付いた。
だって…、いくらなんでもこれは無理だよ…