第1章 再会
「またこの時期になったのかぁ……」
駅のホームの壁にポスターを貼りながらつぶやいた。
年に一度行われるチャンピオンカップのことが書かれている紙をみて、数年前のことを思い出す。
昔ジムチャレンジをしていた時のことを
親の反対を押し切って、三回も出たのも、ヤローさんに押しかけたのも、今思うと凄いありがたいことだったんだなぁ……。
若気の至りとはいえ自分が怖い……
「ニャパー!」
「わっ!…あ、剥がしてくれてありがとう」
考え事をしていると、手伝ってくれていたニャスパーに呼ばれた。
この子は駅員になってから私のポケモンになった子だ。
駅に捨てられていたところを保護し、懐いてしまったのでそのまま私が引き取ることになったのだ。
古いポスターを剥がしてくれていたニャスパーにお礼を言い、頭を撫でる。
すると気持ちよさそうに目を細め、「ニャパ」と言いながら、古いポスターを持って駅員室に入っていった。
シュー……ガタン、ガタン、ゴトン……
最後のポスターを貼り終えた時に丁度列車も出発した。
次の列車まで時間あるし、一区切りつけようかな。
私は余ったポスターを持って駅員室に向かった時、後ろから声をかけられた
「スズ……?」
懐かしいような、聴き慣れているような声
振り返るとそこにはガラル地方最強と言われているジムリーダーのキバナさんがいた。
「キバナさん……如何なさいましたか?」
私は内心とても驚きつつ、表に出さないように冷静に取り繕った。今はもう割り切っているけど、昔は好きだったし、今でもファンは続いている。彼を前に騒がずにいる自分を褒めたい。
「……なんでオマエここに、それに……」
「えっ、なんで……?ここで働いていますから……それに、私なんかのこと……キバナさんよく覚えてくれてましたね。嬉しいです」
そういうと彼は視線を少し逸らした後、「覚えてるよ」と言った
彼の姿を間近で見ると、あの頃の記憶が新鮮に蘇ってくる。
キバナさんと会ったのは初めてジムチャレンジに参加した時……
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