ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第13章 タタリネコ
手首は緩く握られていて痛みは無いものの拗ねた声で唸りながら抵抗を試みて歩く事はせず砂ぼこりを上げる私に彼は目もくれず
「駄目ったら駄目。」
なんてまるで妹か何かみたいに言い聞かせられるまま体験工房まで引き摺られていた
「陶芸体験予約時間まで余裕があるから先に違うのやっちゃうよ。」
紡がれる淡白な声色とはアンバランスな真っ黒の瞳が私を捉える
時間が余るなら見て回ればいいじゃないか………とは言えない
何と言うか………酷く独断的で支配的だ
実の弟を操作してしまうくらいなのだから彼にそういう部分があるのは重々知っていたけれど
まさかこんな場面で彼の人とはズレた猟奇性を垣間見るとは思ってもみなかった
…………しかしまぁ、体験に関しては私の趣向を尊重してくれる気なのだろう
未だ黒を湛える瞳でじっと私を見詰める彼に「ははは」と乾いた笑みが漏れた
もしも私の世界で彼と出会わず完全に彼のテリトリーで出会っていたなら……きっと彼は有無を言わさず私の意思を無視して尊重しようともしなかったのだろうと思った
アパートで過ごした一年は彼と私が歩み寄り、互いを見詰めて、様々な事を学ぶ大切な期間だったのかもしれない
体験の数々を読み上げて「どれにする?」なんて可愛らしく首を傾げた彼はそれでも少し独断的な片鱗を見せているけれど
彼なりの譲歩や思い遣りは私に出会って生まれた物なのだろうと思えば彼の変化に胸が温かくなった
まぁ猟奇性を秘めている事は今更なので致し方ないし……とにかく今を楽しまねば
「陶器の絵付体験ってどんなんですか?」
途端に笑みを向けた私に「さぁ。」なんて間延びした声を漏らす彼の手を握る
彼が独断的に決めたルールの中でも私は彼が一緒ならそれで幸せなのだ