ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第16章 星降る夜の私達
私は砂漠の星空を思い出していた
あの日プールの水面に揺れた異世界の夜空は私の人生の中で一番のものだろうと思っていた
それがまさか私の世界でこんなに美しい夜空に出会えるなんて……
ポカンと口を開けて今にも手が届きそうな光景を眺める私の隣で、彼は徐に長い指を夜空に向けた
「あそこ、あれが秋の大四辺形だよ。」
彼が星と星を辿って指を動かせば浮き上がる様に見えた四角形
「わぁー!!凄いですイルミさん!!」
「本当はあれアンドロメダ座とペガサス座なんだけどね。」
「えっそうなんですか?」
「うん、あっちに大きく見える星があるでしょ……あれがペガサスの頭。」
「…………あそこが……頭……?」
彼の声色は普段より少し穏やかに届いた
「そのすぐ下が水瓶座。」
美しく浮かぶ星空でもやはり星座はその形に見えないけれど
彼は見えない星と星を繋いでは私に教えてくれて
何だか胸がギュッとして頷いた時
寒さを思い出させる様に一際冷たい風が吹いて私は思わず肩を震わせた
……………忘れていた寒さが復活しやがった……………ッ
「………本当に平気?」
「はい、大丈夫………」
笑顔のまま紡いだ私の手を瞬間に大きな手が包んでいた
端正な顔が僅かに眉を潜める
「冷えてるじゃん。」
「………ははは、流石にちょっと寒いです………」
「………………。」
既に感覚が無い程冷えた手に触れられてしまえば取り繕う事も出来ない
然り気無い触れ合いにドキドキしながらも誤魔化す様に笑った私に彼は大きな溜息を付いた
「もっと早く言いなよ。」
「………え?」
ボソリと落とされた呟きが風に消えて身体を傾けたその時だった