第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
あれから。
似非スカウト男をかわし幼馴染と久々の再会を果たすことになった。幼馴染と言えば聞こえはいいが 子供の頃以来会っていなかったのが事実であるし 2人は少し妙な空気の中にいた。
当たり前であるが成長するにつれ それぞれの家庭色が出てくるし 周りの環境にも大きく左右されてくる。それでも懐かしさ自体は変わらないし、偶然の再会は素直に嬉しくもある。ユイはイルミに礼を述べた。
「イル兄さっきはありがとう」
「いいえ」
「でもなんか喧嘩ごしだしヒヤヒヤしちゃった」
「そうかな。でもユイさ、まさか自分の事スカウトされるレベルだと本気で思ったんじゃないよね?」
「……思ってないよっ!」
イルミはメイン通りに脚を戻しながら 後ろを着いてくるユイに話し掛けた。
「似たコがいるなと思ってしばらく様子見てたんだけど。そもそもユイはこんな所で何してるの?」
「そうだ!あたしね 春からこっちの獣医大学に通う事になったの。今日はその手続きとかでやることがあって出て来たの」
「1人で?」
「うん」
「大学か、もうそんな歳なんだっけ。いくつになったの?」
「今年18になる」
「ふうん。早いもんだね」
目の前のイルミは、根本的には変わっていない。単調な話し方も放つ雰囲気も細やかで背が高い所も ユイの記憶のままだった。
ただ、後ろを歩きながら改めて広い背中を見ていると 背格好だけでは誰なのかわからぬ程、外見だけは随分変わっていた。
昔は服装だってずっとラフだったし髪も短かったわけで、目の前に披露されるスーツ姿も 重苦しい程伸びているのに少しもそうは感じられない靡く髪も 似合ってはいるがユイには違和感が拭えなかった。
「まさかこんな都会でイル兄に会えるとは思わなかったな」
「ここ最近 仕事でこの辺の店に出張してるからね」
「そうなんだ。キルは元気?」
「うん。オレも最近会ってないけどミルキに状況報告はさせてるから」
「そっか ゼノお爺ちゃんは?子供の頃よく怒られたよね 懐かしいなあ」
「相変わらず。爺ちゃんは殺されても死なないよ」