第5章 シコ松のシコ〈チョロ松〉
バタン・・バタン・・・。
「・・・ん、何の音だ?」
折角気持ち良く寝ていたというのに、リビングの方から大きな音が2回聞こえ、おれは目を覚ました。
振り向けば隣にいるカラ松も目覚めたようで開ききらない眼を眠たそうに擦っている。残りの兄弟はいびきをかいて寝ていた。
「おい、クソ松。なんだと思う?今の音。」
「十四松が帰ってきたんじゃないのか?」
よく見ると布団にはまだ十四松がいなかった。余程失恋がショックで、リビングで暴れているのだろうか。
「クソ松、見てこいよ。」
「ノンノンノーン。一緒に行こうじゃないか、ブラザー。」
「チッ、」
・・・クソ松の野郎、ビビりやがって。
面倒臭いと思いながらもカラ松と共に布団から出てリビングへ向かう。
「じゅ、じゅうしまぁーつ!!」
カラ松の声がする方へ視線を移せば、ソファーの足元で横たわる十四松の姿があった。
「どうしたんだ、ブラザー。 っ!! すごい熱じゃないか。服もびちょびちょだ。」
カラ松が十四松を起こす。おれが顔の赤い十四松のおでこに触れば、そこはかなり熱く、高熱が原因で倒れたようだった。
十四松は肩で息をしながら、朦朧とした意識で何かモゴモゴと口を動かしていた。
「十四松なんか言ってない?」
「なんだ?十四松?どこか痛いのか?」
「はぁっ・・・はぁっ・・・っ花子、ちゃんっ・・」
「おい、花子がどうしたんだ!」
十四松の肩を強めに揺する。うつらうつらする十四松は力なくキッチンの方を指さした。
十四松をクソ松に託し、キッチンに向かうとそこには十四松同様ぐったりと倒れている花子がいた。