第4章 失恋バナナ〈十四松〉
その後何故か一松くんがカラ松くんの自称ゴットハンドのマッサージを受け、私はお風呂に入った。明日は休みだし、少しのんびりとお風呂に入ると1週間の疲れが取れるような気がした。
・・・ドライヤーめんどくさいんだよなぁ。
迷いに迷いにドライヤーをして脱衣所を後にしたときだった。
『・・・ん? うわっ! 十四松くんっ?』
気配を感じ玄関に目を向けるとびしょ濡れになった十四松くんが玄関で俯きながら立っていた。
私がお風呂に入るタイミングで、外では雨が降り出していた。きっとそのせいで濡れているのだろう。十四松くんの髪の毛からはポタポタと雨水が垂れていた。
『今タオル持ってくるから、』
「・・・・・。」
声をかけてもビクリとも動かない十四松くん。俯いていて表情は読み取れないが、原因は失恋だろう。
一松くんによれば、十四松くんは引っ越す彼女の見送りに行ったとか。
・・・そりゃ、落ち込むよね。
初恋で、失恋。私は中学生のときを思い出したが、首を横に振り考えるのを辞めた。
『これで身体拭いて?』
「・・・・・。」
『もう、しょうがないな。』
タオルを差し出しても俯いたまま動かない十四松くんに、仕方なく私からタオルで拭きに行く。
背伸びをしてやっと届く髪の毛をバサバサと拭いていると、ポツリと十四松くんは喋った。上手く聞き取れなくて、手を休める。
『ごめん、何て言った?』
覗き込むように十四松くんの顔を見る。
ようやく目が合うと十四松くんはそのまま私を力強く抱きしめた。
『じゅ、十四松くんっ?』
「・・・花子ちゃん。ちょっとだけ、このままで。・・・おなしゃすっ・・。」
消えてしまいそうなほどの細い声で、十四松くんは私の肩に顔を埋めて切願した。その目からは涙が溢れていた。