第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「ごめん、未琴」
「なに?凛、だよね?」
「うん」
「にの、みや?」
「そうだよ、未琴さん」
「━━━━ッッ」
唇を噛み締めて俯いた、あと。
未琴はそのままドアからものすごいスピードで出ていった。
「未琴っ、待って!!」
「凛っっ、動くな!!今……」
「こないで!!」
未琴。
未琴が、あたしに見せる表情は、『恐怖』、の、それで。
まるで知らない人を見ているようだ。
「未琴」
「こないでってば!!」
一歩、一歩、未琴へと近づけば。
また未琴はそのまま走って階段を下りていった。
後を追おうとして足を前に動かす前に。
「駄目だ、凛」
「翔琉、退いて」
「さっき飲んだばっかりだよ?動けないよ」
「でも未琴は大事な友達なの」
「凛っ」
「ごめん翔琉」
未琴は大事な友達だから。
ほっとけない。
「━━━きゃぁぁぁぁっっっ」
「!!」
今の、未琴?
「退いて翔琉」
「凛はここにいて。俺が行く」
階段を下りようとするあたしの腕をつかんで、いつになく真剣な瞳の翔琉に、一瞬怯む、けど。
「━━━っ、放してっ」
ドン、て。
翔琉を思い切り払いのけた、瞬間。
そのまま走り出そうと、くるりと向きを変えた、瞬間。
「━━━━凛っっ」
急に頭がクラクラと目眩を、起こして。
翔琉が手を伸ばすのをスローモーションのように目で追った。
途端に。
ズザザザザ━━━━っっ
ガツンっ
体に走った衝撃と。
体が滑り落ちる音。
ふたつの音を、聞いたあと。
あたしの意識も闇の中へと入り込んだようだ。