第8章 「フキノトウ/フキ そしてツクシ」
フキノトウ二つを先に揚げ、
ツクシはその次だ。
キッチンペーパーを
敷いた皿をさやかが構え、
揚がった天ぷらを受け取る。
「さっさと持ってけ」
テーブルにはツクシの佃煮と
ばっけ味噌、天つゆ、保温してあった
さやかの混ぜごはんが次々に並び、
最後にフキの佃煮と味噌汁が
リヴァイの手で到着した。
汁椀からフキノトウの
香りがぷんと漂う。
その香りに惹かれて、
いただきますもそこそこに
さやかは味噌汁に手をつけた。
薬味の代わりに散らされた
フキノトウがいつもの味噌汁の味に
ほろ苦い香味を足している。
『......おいしい。何か
ワンランク上の香りになるね』
そして、次に手を伸ばしたのは
フキノトウの天ぷらだ。
天つゆに軽くつけて、
がぶりと一口......
『?!』
さやかは思わず口元を押さえた。
同じくフキノトウの天ぷらを
かじっているリヴァイは
平然と口を動かしている。
数回噛んだ天ぷらを
無理矢理飲み込んでから、
さやかはこっそり水を含んだ。
そして、恐る恐るリヴァイに尋ねる。
『これ......すごく苦くない?』
「一人一個がノルマだからな」
『リヴァイ、もしかして知ってた?』
「フキノトウの天ぷらは苦いんだよな」
『何で最初に教えてくれないの!!?』
「さやかが食いたがってしな。
俺は苦手だが、人の好みは人それぞれだ。
さやかは気に入るかも
しれないと思ったからだ。」
確かにリヴァイらしい
意見ではあったが
......だがしかし!
〝苦い〟くらいのことは
言ってくれてもよかったのでは!
恨みがましくリヴァイを睨むが、
カエルの面に水だ。