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魔界皇子と魅惑のナイトメア

第3章 青の瞳



「く……うっ」
「あれ、痛くない?」
「おい」

自分の下から声がして、急いで顔を上げると間近で青い瞳とぶつかる。

「トア……さん?」
「おい、降りろ」
「あ、すみません」

トアの少し苛立たしげな声にのそのそ降りる。

「お2人とも大丈夫ですか?」
「ああ。こいつのせいで潰されかけたがな」
「ぎくっ!」
「一様医務室へ行った方がいいだろう。おいお前、こいつを連れて行ってやれ」
「は、はい。じゃあ天月さん行きましょう」
「え、別に大丈夫だよ。痛いとこもないし」
「いちよう行っておけ。後になって何かあったのでは遅いんだぞ」
「はいはい」

トアは遠ざかる2人の後ろ姿を見送りながら溜息を吐く。

「あの馬鹿」

トアは左手首を摩っていた。

医務室で擦り傷の手当てをしてもらい、廊下を歩いていると曲がり角でトアに出会した。

「あ……」

目についたのは、左手首に巻かれた湿布だった。

「捻ってたんですか」
「気にするな」
「………えー?」
「大したことはない。さっさと授業に戻れ」

「でも一番重症なのは、トアさんじゃないですか」

ぐっと息を詰まらせたトアは仕方ないと溜息を吐いて、こんなことを聞いてきた。

「はあ……なら俺に教えろ」
「何をですか」
「もう1人の女のことだ」
「教えるも何も、葵さんと会ったのはあの時が初めてですよ」
「何っ!」
「だからトアさんに提供できる話はありません」
「そうか。なら仕方ないな」
「ああ。その代わりと言ってはなんですが、もしもトアさんにピンチが訪れれば私が必ず助けますから」
「……!」
「それでは失礼します」

呆然とウチを見つめるトアに一言告げて歩き出した。

「あら?見かけない顔ね」

窓の側で立ち止まっていると、スタイルの良い女性が顔を覗き込んできて言う。

「貴女黒い瞳なのね………珍しいわねえ」
「……っ」
「あ、急にごめんなさいね。私、ヴァイオレットよ。よろしく」
「え、ああ……はい。宜しくお願いします」
「貴女こんなところで何してるの?」

悩ましげに唸った後、窓の向こうを見て顔をヴァイオレットに戻す。

「光合成でしょうか」
「えっ、ふっはははは」

ついに耐えきれなくなったのか、笑い始めるヴァイオレットに、何事かと首を傾げる。

「貴女なかなかおもしろいわね」
「そうでしょうか」

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