第2章 美しい嘘つき
中ではルルがくるくる回っている。誰か助けを呼びに行こうとしているらしい。
騒がしい気配が居なくなったと思った途端、今度は女取っ替え引っ替え野郎の気配を間近に感じる。そしてウチの顔の横に手が付く。
どうしようかと模索していると、バタンっといきよいよくドアが開く。それにビックリして起き上がると、ゴンっと鈍い音がして頭を押さえた。
「いったー」
「うっううう」
「ご主人様、大丈夫ですか? トア様を連れて参りました」
「……お前………」
トアの冷ややかな視線の先には、頭を抑える天月とフェンがいた。
「何をやっている………おい行くぞ! こいつには十分注意しろ、嘘ごとの天才だからな」
フェンはずるずると引きずられ部屋を退室する。
「だ、大丈夫?」
涙目で葵に頷く。
「あのエロいし頭」
……さらに
「葵ちゃん、髪の毛に何かついてるよ」
あれから懲りてないのかフェンはことごとく葵の頭を触る。。
「触れていいかな?」
「は、はい」
するとフェンは葵の耳を触り始めた。
「……」
ウチは近づきフェンの手首を捻じ上げる。
「痛たたたっ!」
葵から手を離したことを確認して、手首を解放してやる。
「天月ちゃん、痛いよ」
「なら手を出さないことですね」
「参ったなあ」
「あっそうだ、天月ちゃん俺と一緒に昼寝してくれない?」
グーパンチでフェンの鼻を殴ると、フェンの鼻から血が垂れた。それを見た女子生徒たちは天月を睨む。
「よし、移動教室」
「あ、待って天月さん」
「天月ちゃんに、殴られた鼻を摩りながら廊下を歩く。鼻血は多少出たが止まったので問題ない。
あの子は、女性にしては力が強く品がない。あまり話もしないし、話しかけても無視されてしまう。それとは逆にベビちゃんは面白かった。ベビちゃんは普通の女の子って感じで、天月ちゃんは普通と言うにはちょっと違う気がする。こうなんかもっと………
「おや? フェンさん、歩きながら考え事するなんて珍しいですね」
「あ、ロイくん」
「もしかして、転入生の葵さんのことですか?」
「まあね」
「そうですか」
とにかくロイくんもベビちゃんを気にかけているのだろう。
まあ俺が先だけど、この計画だけは絶対に成功させなければならない。どんな手を使っても……