第17章 薄紅葵のティータイム
「ちゃんは甘いもの好きなんだねぇ。」
『はい、とっても!特に洋菓子が好きです。』
「へぇー。ここ、確かケーキも美味しかったと思うから追加で頼もうか?」
『えっ!?いえ、そんなっ。···こんな時間に食べてしまっては、晩御飯が食べられなくなりますからっ。』
あー可愛い。可愛い可愛い可愛いっ。
何だか、急に子供のような言葉が出てきて思わずふっと笑いがこぼれる。やっぱり彼女は以外に表情がコロコロとよく変わる。
顔の前で両手を振って慌てる様子が何だかとても可愛く見えてしまう。あー、でも本当は食べたいんだろうな、なんかそんな顔をしてる。
でも確かに、そろそろ時刻は夕方を過ぎる頃だろうし。女の子がこの時間にケーキなんて食べたら育ち盛りとはいえ、晩御飯に支障はきたすかも。
「じゃあさ、今度またここに来て、次はケーキも食べようよ。」
『え!?でも、ご迷惑じゃ。』
一瞬ぱっと微笑んだかと思えば、次はしゅんと眉毛が下がった。
その様子にまた顔が緩む。
「ぜーんぜん迷惑じゃないよ。ちゃんが幸せそーに食べてるところ見るの楽しいし。是非また一緒に食べに来ようよ。」
そう言えば、ちゃんは少し迷う仕草の後にコクンと頷いた。じゃあ連絡をとれるように連絡先を教えてくれる?と聞いてみればちゃんは快く教えてくれた。
心の中の自分がガッツポーズをしている。
ふとテーブルを見渡せば、クッキーも無ければもう飲み物もお互い飲みきったようだった。
暗くなる前にちゃんを帰したいし、そろそろ終わりかなと声を掛ける。伝票を探しているけれど、ちゃんが御手洗に行った時にもう済ませてある。そう伝えると、とても慌てていたけれど、次のケーキをご馳走してくれる?と声を掛けると、少し迷ったような顔の後、はいと返事をくれた。
本当は払わせる気ないけど。
出来るだけ家の方面まで送って行くと言ったけれど、そんなにも迷惑をかけられないとそれは頑なに断られた。
家に着いたら必ず連絡をして欲しいと約束して、かなり名残惜しいけれど、ちゃんと別れた。
こんなに女の子に対して心躍るのは初めてだ。
帰り道、今日の彼女の顔を思い返して思わず顔が緩むのを必死に隠して家までの道のりを歩いた。