【名探偵コナン】トリプルフェイスの幼馴染は最強?【BL】
第11章 怪盗キッド
『…捕まえたぜ、怪盗さんよ』
「!?…それはどうでしょう?」
掴んだ腕を離さないようにしながら声を発する俺に対して微かに揺れる身体の動きに口端を上げていたのだが、余裕のある言葉に怪訝な表情を浮かべると同時に確かに掴んだはずの腕の感触に違和感を感じ、会場内の電気がようやくつくと掴んでいた腕が作り物だと分かり思いっきり舌打ちを溢す。
「見てッ!レッドアイズがなくなってるわ!」
「怪盗キッドの仕業だろッ!」
室内に明かりが戻るなり展示されていたはずのレッドアイズは既になく、代わりに怪盗キッドからの予告通り頂きましたとのメッセージカードだけが残されていて騒つく会場内。
「くそっ、奴はまだ船の中に居るはずだ!すぐに全ての出入り口を封鎖…ッ!?な、何事だ!?」
怪盗キッドは変装も得意らしく招待客の誰かになりすましているはずだとキッド先任の中森警部がすぐさま指示を出そうとした時、突然船内に響き渡る破裂音と煙幕に乗客がパニックになってしまうのも無理はなく。
緊急事態に備えて訓練されているボーイや警備員達が落ち着いて避難誘導をしている様子を暫く見ていれば視界に入る1人の人間に笑みを深めた。
「悠!!」
『透、お前も乗客の避難誘導を手伝え。俺は少しやる事ができたんでな!』
「え、あ、ちょッ!!……ったく、無茶だけはするなよ…」
俺を呼ぶ零の声に応えるも要件だけを告げて船に乗る際に頭の中に記憶した船内図を思い出し、今ならまだ間に合うと走って先回りした。
『…何処に行く気だ?怪盗キッド』
「っ!?……貴方はあの時の…。私が怪盗キッド?いったい何をおっしゃってるのか…」
『もうバレてんだよ。…お前、腕怪我してるだろ。グラスを渡す時に一瞬だけ包帯が巻かれているのが見えた』
「…それが何故私が怪盗キッドだということになるんですか?」
『フッ、俺が暗闇の中お前の腕を掴んだ時だ。すぐに分かったぜ?コイツ怪我してるな、ってことによ。だが決定的になったことが一つある』
「………決定的になったこと?」
『今この場に居る、それが何よりも一番の証拠。他のボーイや警備員が避難誘導しているにもかかわらず1人だけ逃げる乗客に混じっていたこと。…さて…何か言いたい事があるなら聞いてやるぜ?』