第16章 犬馬の心
ぼくは布団から抜け出て、普段使いの鞄の中に手を突っ込む。
「あ……」
それを見ただけで急速に充たされていくみたいだ。
ぼくの宝物の赤い首輪。
首に巻き付け、ほうっと溜息をつく。
手垢の付いた鏡に自分を映した。
暗い雰囲気も、中性的な女顔も、周りよりも低い背も。
何もかも好きじゃないけど。
『可愛いですね』
ゾワゾワと身体が震える。
紗都せんせいの声を思い出しただけで身体が幸福に満ち、
「あぁっ……」
下腹部が甘い気持ち良さに支配される。
可愛い、可愛い……。
『サヘルくん』
名前を呼ばれる瞬間を思い返し、身体がぞくっと痺れる。
ぼくはもう一度下半身に手をやる。
熱く高ぶったそれはそそり立って、先っぽから我慢汁を零していた。