第3章 むかし
「仲間とはぐれちゃってさー、トラファルガーは1人?」
ロー、と呼んだ方が短くて言いやすいのでは…と思ったがきにしないことにした。
「……よった。」
「え?」
「道に迷った…」
女は数秒考えた後にプッと吹き出した。
「あっはっは‼え、もしかして方向音痴だったりする?」
「迷ったのは初めてだ。」
「へー、そうなんだ。この時間じゃ無理だろうね。あたしは宿泊まる予定だけどあんたはどうする?」
外は暗く、時間は午後10時を回っている。
「おれもそうするしかねェ…」
「だよねー。あ、あたしそこの入るよ。」
「…ここしかねェな。」
「うん。迂闊に歩いて迷ったら嫌だもんね。」
女と宿に入り別々に部屋をとる。
"一泊:人数問わず一部屋3000B。"
「あ…あれ?」
「どうした。」
「お…お金が…ない。」
この宿は前払いのようで、女は財布を出していた。が、肝心の中身がないらしい。
漫画のように逆さまにしポンポンと叩いてみている。
「あの…キャンセルで…。…野宿か…」
まるで生気が感じられない。
野宿という言葉を繰り返し店を出ようとする女の首根っこを掴み店に戻す。
「2人で一部屋…3000B、これでいいんだろ?」
店主から鍵を受け取り女の首根っこを掴んだまま部屋へ向かう。