第45章 別れよう
「ったく緑間のやつ、先に帰りやがって。明日会ったら埋めるぞ、まじで。」
「どうだ?久しぶりにパイナップルでも持ってこようか?」
「おうおう、それは是非ともお願いしたいね。そんでぐちゃぐちゃになったパイナップルを緑間に、」
「おい宮地、その辺にしとけよ。山田の具合いが悪いんだ。仕方ないだろう。」
なんて宮地さんの怒りを宥めるのはキャプテンの大坪さんだ。
真ちゃんと山田が帰り、イライラとモヤモヤと何とも言えない感情を抱きながら観客席に戻る。悩み抜いた末、先輩たちには“山田の体調が急に悪くなった”とウソをついた。
「・・・高尾、何かあったのか?」
「あ、いや、えっと・・・、」
「大人の目は誤魔化せないぞ。それに2人とも鞄を置いて帰るなんて変だろう。」
「・・・、」
「で、何があったんだ?」
しかしそんなウソを、いとも簡単に見抜いてしまうのは隣に座る監督。ズイっと覗き込むように問われ、この人にウソは付けないと判断したオレは、反対の隣に座る先輩たちには聞こえないように小さな声で事実を述べた。
それから監督は怪訝そうな顔をしながら“そうか・・・、”と一言呟いたきり、その後試合が終わるまで口を開くことはなかった。
そしてその試合はと言うと、途中点差が開くことはあったものの、“責任もって倒すんで。”と宣言した黄瀬くんの言葉通り勝ったのは海常だった。
「パーフェクトコピーとはまたとんでもねぇ技身につけやがって。緑間もそうだけど、とことんバケモン揃いだな。キセキの世代は。」
そう宮地さんが言うように、黄瀬くんのパーフェクトコピーは本当に凄かったし、そのお陰で勝利したと言っても過言じゃないほどの活躍ぶりだった。
ところが見応えのある試合だったはずなのに、オレの頭の中は山田のことでいっぱいで、とてもじゃないが試合の感想を言えるような気持ちには到底なれていなかった。
それどころか、一瞬でも気を抜くと少し乱れた格好の山田が脳裏にチラつくのだ。そして考えないようにしようと思えば思うほど、真ちゃんとのキスシーンが何度も映像となって流れてしまうもんだから、正直に言えば、あまり集中して試合を見ることはできなかった。