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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第44章 忘れさせてやる






「すげぇ試合だったな。」


『ほんと、手に汗握る試合だったね。』




午前中に試合をこなした私たちは、誠凛対陽泉の試合を見学していた。結果は黒子くん率いる誠凛が勝利したが、最後の最後までどちらが勝つのか分からない試合だった。


そんな試合を見せられて、興奮が冷めやまないのは高尾と私だ。声にこそ出さない(いや、出せない)が、やはり氷室さんはかっこよかった。ミラージュシュートはもちろん、サラサラな髪の毛が揺らめく度に私の目は釘付けになった。



・・・これは浮気じゃないよね?
と思いつつも、彼氏がいる身で他人(よそ)のオトコにときめいているなんて少し後ろめたい。




「まぁ、順当なのだよ。」



そんなことを考えているなんてつゆ知らず、私たちとは打って変わって冷静な真ちゃんが口を開いた。いつも火神くんとは言い合いばかりしているが、実際のところ誠凛の勝利を一番喜んでいるのは真ちゃんかもしれない。


証拠に、ほんの少しだけその口角があがっているのを私は見逃さなかった。




『高尾、次の試合まで時間あるよね?』


「あと30分あるけど・・・どうした?」


『ジュース買ってくる。何かいる?』



喉が乾いた私は、お財布を片手に席を立った。一緒に行こうかと声をかけてきた高尾の誘いを断り、頼まれた真ちゃんのおしること高尾のコーヒーを探し求めて、外の自動販売機まで足早に歩いた。




『さっむ!』



時は12月23日。冬真っ只中だ。
制服のせいもあってか、かなり寒く感じた。体育館を出るまではオレンジジュースを飲もうかなと考えていたが、一気にその気はなくなった。


並ぶドリンクを見て、ホットのココアを買った。高尾のコーヒーと最後に真ちゃんあたたか〜いおしるこを自動販売機から取り出したときだった。




「やっぱり山田だよね?」



誰だか分からず振り返ると、そこにはジャージをだるそうに着崩した二度と顔も見たくないアイツが立っていた。




「あれ?もしかして覚えてない?」


『・・・っ灰崎、』


「んなわけねぇか、あーんなことやこーんなことした仲だもんね。」



顔を見ただけであの日の記憶が一瞬で蘇り、手や口、足あらゆる部分が一気に震え始める。


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