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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第40章 オレに取られるぞ





「オマエらが話しているのを途中から聞いていた。」


「どこから?」


「中学時代、花子が黄瀬たちと出かけたあたりから。」


「割と序盤じゃねぇか。」



全く、声かけろよな。
いつの間にかこちらに顔を向けていた真ちゃんにそう言いそうになったが、その真剣な顔つきを前にしてオレは思わず口を噤んだ。そして伏し目がちに真ちゃんは口を開いた。



「オマエは花子に“キレイ”だと言った。アイツはきっと嬉しかったはずだ。オレや赤司なんかに言われるよりも何倍も。」


真ちゃん曰く、真ちゃんや赤司が言うそれには何の意味もなく、第三者のオレが言うからこそ響くものがあるらしい。


オレにはその意味がよく分からなかったが、第三者と部外者のように括られたことには少しばかり腹が立った。でもそれは言わなかった。



「ったく、オマエの耳は地獄耳かよ。」


「かもしれないな。ちなみにしっかり頭を撫でていたこともオレは気付いているからな。」


「こわっ!オマエの目は後ろにもついてんのか?」



まさか、とオレの冗談にも真面目に答える真ちゃんにこちらも真面目に問いかける。



「なぁ、もしかして妬いてんのか?」


「あぁ、かなりな。でも花子に“キレイ”と言ってくれて感謝している。」


「感謝されるほどのことじゃねぇよ。それに本心でそう思ったから言ったまでだ。」


「そうか。」



優しそうな表情の真ちゃんを前に、次に湧き上がってきた言葉たちを言おうか言わないかすごく迷った。すごく迷った上で敢えて口を開いた。



「ちゃんと山田のこと捕まえとかねぇと、オマエ、オレに取られるぞ?」


「バカめ。アイツはオレのだ。」



同じことを何度も言わすな、と真ちゃんが笑ったところで、玄関から少し困った顔をした山田が出てきた。



『ねぇ真ちゃん、15巻ないんだけど。』


オレと真ちゃんは自然と目が合って笑った。そしてどんな表情をしても、どんなに傷が増えたとしても、やっぱりオマエはキレイだと、互いに思ったことは口にしなくても分かった。


『何ニヤニヤしてんの?2人して。怖いんですけど、』


なんて笑う山田が心底愛くるしいと思った。

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