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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第38章 一発、ドーンと






「なにそのあだ名。笑えるんですけど、」



そんなに私が“金魚の糞”と呼ばれていたことが面白かったのか、お腹を抱えて花宮真は笑っていた。


彼ときちんと会うのは今日が初めてであったが、私は花宮真のことをよく知っている。



不登校にも慣れた去年の秋のことだった。私は通院していた大学病院内にある学校で、木吉鉄平と出会った。


学校とは良く言ったもので、そこは病院に入院している小学生から高校生までの患者が自習するために設けられたスペースのことだ。


そこでは付属の大学生がボランティアで私たちに勉強を教えてくれていた。当時の私は退院していたが、通院も兼ねてそこに週に2日ほど通っていたのだ。


特に苦手な英語の勉強を教えてもらっていた。机にへばりつきながら、ただひたすらに与えられた問題を解く。秀徳へ行くためにはどうしても英語の偏差値をあと5つあげる必要があった。


分からない問題に頭を抱えていると、トントンと松葉杖をつく音が近付いてきた。




「もしかして、山田さんだよね?」


『・・・何か用ですか?』



先に声をかけてきたのは、松葉杖をついていた鉄平さんの方だった。パイプイスを一つ挟んだ隣に何食わぬ顔で彼は腰を下ろした。


しかしその頃の私と言えば、身体の傷はとっくに治ったというのに、心の傷はまだ塞がっていなかった。


それ故、慣れていない人との会話は顔をあげることもせず、つっけんどんに返事をするのが精一杯だった。



「覚えてないか?2年前の全中で会ってるんだけど、」



少し照れたような素振りを見せながら、解いていた英語のプリントの横に、彼はポケットから取り出した黒飴を1つ置いた。

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