第1章 責任感じてるんスよ
「クッソー、信号待ちでジャンケンなのに・・・オマエら1回もこいでなくね?」
「そんなの当然なのだよ。なぜならば今日のおは朝占い、オレのかに座は1位だったのだから。」
『それにほら、私は女の子だし。』
「はぁー?それ、関係あんの?」
こういうときだけ、オンナになる山田に、“オマエをオンナだと思ったことなんか一度もねぇよ、バーカっ”と、言ってやりたかったが、喉元にまでせり上げてきたその言葉たちをどうにかこうにか呑み込んだ。
“自主練をしよう”
朝イチ真ちゃんからの電話でオレは目覚めた。準備もそこそこに言われた通り公園に行くと、そこには山田もいた。そしてその横にある変な乗り物もすぐに目に止まった。
「ん?なんじゃこれっ?」
自転車(いやリアカーか?いや自転車か?)・・・のようなものに目が止まり思わず声が裏返る。これは後から聞いた話だが、正式名称(?)はチャリアカーらしい。
「見た通り自転車だ。漕げ。」
「はぁ?」
「何度も言わせるな、漕げと言っている。」
涼しい顔をして真ちゃんと山田はその荷台の部分に乗り込んだ。その状況も分からないままに、サドルに跨り、渋々オレはチャリアカーを漕ぎ始めた。聞けば目的地は海常高校らしい。
「クッソ遠いじゃねぇかよ。」
「言っただろう、これは“自主練”だ。」
「オマエは乗ってるだけじゃねぇか。フェアじゃねぇ。」
「そこまで文句を言うのなら、信号で止まるごとにジャンケンをしよう。負けた方が漕ぐ。これでいいか?」
「のった!」
そしてその後何度も信号待ちでジャンケンをしても、負けるのはオレばかりだった。
そして冒頭に戻る。
「つーか、わざわざ練習試合なんか見るくらいだから、相当できんだろうな?オマエらの同中。」
「マネっ子と、影薄い子だね。」
「それ、強いの?」
“良い例えだね”なんてゲラゲラ笑っている山田のその姿は、決してオンナっぽくなどなかった。