第33章 赤司が大きくなったんだよ
『・・・重い?』
「ったく、起きたなら降りるのだよ。」
『えー家まで運んでよ。』
夏休み、試合終わりに真ちゃんの家で夕方を食べていつの間にか寝てしまうのは、もういつものことだ。
そしてそんな私を背負って真ちゃんが部屋まで運ぶのもまた、いつものことである。
夏休みに入ってから、Tシャツを隠される嫌がらせはピタリとなくなった。
気が済んだのか、バスケ部員ではなく赤司のことが好きな女の子がやっていたことなのか、その真意は分からないままであったが、この夏休み中は何事もなくバスケに打ち込めていた。
「少し重くなったか?」
『あー、ひっどい! 真ちゃんが食べるのもトレーニングだとか言っていっぱい食べさせるからじゃん。』
「オマエが聞いてきたから、正直に答えたまでだ。」
『だからモテないんだよ、真ちゃんは。赤司だったら“そんなことないよ”って言ってくれるもん。』
「オレはウソついてまでモテたくないのだよ。あーほんとに重たい。」
『もう、うるさいなー。』
結局、重いと言いながらも真ちゃんは私を背負ったまま家まで運んでくれた。
「明日決勝なんだから、 ちゃんとストレッチして早く寝ろよ。」
『ん。じゃーねー、また明日。』
私が扉を閉めるのをきちんと確認してから、真ちゃんは家へと戻って行った。
明日はいよいよ全中の決勝戦。
男子女子共に対戦校は予定通り照栄中だ。
真ちゃんに言われた通りしっかりストレッチをして早めにベットに潜り込む。明日の試合が楽しみすぎて手が震えているのが分かった。
・・・これが武者震い?
高ぶる気持ちを必死に抑え、やっとの思いで私は眠りにつくのだった。