第22章 またかよ
『あーダメだ。分かんない。』
花子はへなっと笑う。
・・・とても腹が立つ。
オレはわざとらしくもう一度ため息を吐いた。
今から約8時間前のことだ。
『・・・っ苦しい、真ちゃんっ・・』
防波堤の上で向かい合ったまま、貪るようなキスに終止符を打ったのは花子の一言だった。
オレは花子が同じ気持ちであることが嬉しくて、我を忘れてしまった。そして欲望のままにキスをした結果、苦しくなった花子に胸を叩かれその状況にやっと気付けたのだ。
「・・悪い。すまない・・・のだよ。」
『ううん、大丈夫。』
気にしないで、と言われたものの肩で息をする花子を見ると、やはり申し訳ないと思った。
月夜の光の中オレたちは急に恥ずかしくなり、目を合わせることも出来ず。そんな恥ずかしさを紛らわすためにそっと花子を引き寄せた。
オレの胸に顔を埋める花子は抵抗することなく、静かにその手を背中に回してきた。
「怖くないか?」
今更か、とも思いながら念のため聞いてみる。
『大丈夫。・・・それに、』
花子の表情こそ見えないが、オレの服をキュッと掴んだのは分かった。
『・・・真ちゃんだったら、・・何されても怖くないよ?』
「・・・は?」