第6章 紫原敦
そして5日後 ----------
さやと紫原は、空港で待ち合わせをしていた。
(予定通りなら、あと10分で敦がくる)
紫原の到着予定はAM11:00
少し早く着いたさやは7番ゲートで
紫原がくるのを今か今かと待っていた。
あの夢は1回見ると
紫原の腕の中へ飛び込むまで毎日毎日見続ける
他の誰でも代わりは務まらない。
紫原でなければ暗い暗い悪夢は
晴らせない
「あっ…!」
ぞろぞろと搭乗口から人が降りてくる
敦、敦はどこ…?
2mもある敦を見失う訳はないけど…
次々に降りる旅客がさやをジロジロと見つめる
美しい女が誰かを探している。
絵になりそうだ と誰もが思った。
「あっ!敦ー!」
一際大きい集団が降りてきた。
その中でもつまんなそうに歩く
1番大きい紫原はよく目立っていた。
「紅ちんー待ったー?」
「私を待たせるなんていい度胸ね」
紫原はさやを見つけると
前にいたチームメイトを退け、駆け寄った。
久しぶりに見る紫原は
あまり前と変わっていない様に思えた。
「じゃあー紅ちん
ぎゅーってしとくー?」
「ええ…会いたかった敦…」
紫原はもっていたお菓子の袋を
後ろのチームメイトに向かって投げ
さやを上から抱きしめた。
「紫原が菓子を投げた…!」
「てかあの美人誰なんだー!
紫原ぁぁ!俺にも紹介しろー!」
「あの子と岡村じゃ月とすっぽん。
野獣と美女アル」
外野がワイワイとうるさかったが
さやと紫原は久しぶりの再会に夢中だった。
いつもいつも
私を悪夢から救ってくれるこの熱が
愛おしくて愛おしくて
やっと私は悪夢から解放される…
さやは安心したように涙を流した。